山上汽船ブログ
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読書感想文〜本紹介〜『摩天楼の身代金』2025.04.30 水 08:26

今回紹介する小説はリチャード・ジェサップ氏の小説『摩天楼の身代金』です。

この小説はある事情から大金が必要になった主人公であるトニオが「世界で最も安全」と謳う超高級マンションを人質にし身代金を要求するという話になっています。
この話の面白いところはビルに爆弾を仕掛ける計画や身代金の受け取り方など斬新な発想が多々見受けられ、主人公の用意周到なさまには思わず感嘆してしまいます。そして主人公のいわゆる敵役であるマンションの総支配人のマードックという人物も知的でクールで魅力ある人物として描かれており、頭脳戦も作品の魅力になっており、最後まで結末がどうなるのか分からない、そんな作品になっています。
この作品は伏線の張り方もすごいのでそこも見てもらいたいです。
小説としても淡々と状況を語るようなそんな形式になっているので比較的読みやすいとは思うのですが、ただ42年前の作品で訳された作品がこれしかないので会話とかの訳にちょっと違和感があると思いますがそれでも楽しめる作品なのでぜひ読んでみてほしいです。
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読書感想文〜本紹介〜『国胴』2025.03.31 月 06:51

今回紹介する小説は帚木蓬生氏の小説『国胴』です。

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この小説の舞台は奈良時代になっていて、銅山で働く主人公の国人が都へ上り、奈良の大仏建立の為に働くという物語になっています。
物語の中で当時の銅山の様子や銅の岩石の切り出しから精錬までの手順が詳しく描かれており、他にも巨大な大仏をどのように鋳込んでいくかが描かれているので、とても勉強になるなと思いました。
また物語の中で主人公が苦しい労働に耐えながら、文字を覚え、勉強し多くの人と出会い成長していく様子はすごいなと思いました。
また主人公以外の登場人物も魅力的ですが、やはり当時の労働環境は良くなく、建立中にも亡くなるひとも多く出るのですがそこを乗り越えて進んでいき、大仏の完成まで辿り着く物語に引き込まれていきます。
ラストは少し物悲しくなるような感じですが当時の時代背景を考えると、こんな物なのかなと思いました。
この作者の作品は他にも『逃亡』や『水神』なども面白いのでオススメです。

 

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読書感想文〜本紹介〜『華氏451度』2025.02.28 金 12:00

今回紹介する小説はレイ・ブラッドベリ氏のSF小説『華氏451度』です。

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この小説は本の所持や読書が禁じられた世界で昇火士という本を燃やして取り締まる仕事に就いている主人公がとある少女と出会い、社会に疑問を持ち出すという話になります。
この小説を読んで最初に思ったことが今の現代社会とリンクする点もあり、1953年に書かれた小説なのにすごいなーと思いました。ネットやSNS、スマホの普及により本を読むということが減っているように感じます。文字を読むよりも映像を見聞きする方が楽なんですけど、そのせいであまり考えず思考能力が低下しているように感じます。
メディアの情報を鵜呑みにして思考能力の低下したディストピア、こうはなりたくないよなあと感じる世界観で、読んでいると人って単純だなぁって思いました。
ラストはちょっと微妙だなーとは思うんですけど、まあこれはこれで良いのかなとも思える作品でした。
レイ・ブラッドベリ氏の作品は詩的な表現が多いので少し読みづらさがあるのですが理解できれば面白く読めるのでオススメです。
特に短編が読みやすく飽きにくいと思うので、『バビロン行きの夜行列車』と『二人がここにいる不思議』がオススメです。
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読書感想文〜本紹介〜『霧隠才蔵』2025.01.31 金 12:05

今回紹介する小説は火坂雅志氏の時代小説『霧隠才蔵』です。

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この小説は有名な真田十勇士の1人、霧隠才蔵が主人公で物語としては霧隠才蔵が徳川の忍びとしてある巻物を探すところから始まるのですが猿飛佐助との出会いから豊臣側へと組み込まれていき、大坂夏の陣後まで描かれています。
時代小説であるので史実とは違った展開になり、他の真田十勇士が描かれた小説とも違う物語が楽しめました。
文体としても読みやすく忍びの技の解説などもあるので不思議と話に引き込まれていきます。
忍び同士の戦いも読んでいて面白く、他にはないものを味わえます。
そして、主人公でもある霧隠才蔵も魅力的であり、裏の忍びとしての姿だけでなく、表の姿として連歌師としての顔もあり、冷淡、非情になりきれない人間味のあふれた人物に惹かれていきます。
ただこの手の小説によくある色事が多いのがちょっと微妙だなって思いました。
この作者の他の小説には大河ドラマにもなった直江兼続が主人公の『天地人』や黒田官兵衛が主人公の『軍師の門』など面白い時代、歴史小説がたくさんあるので是非読んでみてほしいです。
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読書感想文〜本紹介〜『樽』2024.11.30 土 01:42

今回紹介する小説はF・W・クロフツ氏の推理小説『樽』です。

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こちらの小説は推理小説の中でもアリバイ崩しの傑作と呼ばれており、劇的な展開など派手さは無く、地道に地道に真犯人のアリバイを聞き込みなどで崩していく展開になってるので読み終わった時の爽快感はあまり無いと思うのですが、読み進めていくうちにだんだんのめり込んでいくそんな小説だと思います。
内容としては、ロンドンに到着した船荷の樽の中から大量の金貨と女性の死体が発見されるところから始まるのですが、その樽の経路から真相を探ろうとするのですが、舞台がロンドンやパリ、ブリュッセルへと移り変わり、樽が増えたり消えたりするのでわけがわからなくなるのですが、現場を調べ、こつこつ聞き込みをして地道に捜査を進めていくそんな展開に頭がこんがらがるのですが読む方も整理しながら読んでいくと、どんどん話にのめり込んでいき、捜査の一員になったような気分になれます。
自分がこの小説を読むキッカケになったのが鮎川哲也氏の小説『黒いトランク』を読んでこの小説に影響を受けた作品と知ったからなのでそちらを読んでみるのもオススメです。
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読書感想文〜本紹介〜『果しなき流れの果に』2024.10.31 木 05:54

今回紹介する小説は小松左京氏のSF小説『果しなき流れの果に』です。

この小説は50年以上前に出版されたSF小説なのですが未だに色褪せない小説だと思います。
内容としては6000年前の地層から永遠に砂が落ち続ける砂時計が見つかりその後見つけた関係者が変死、行方不明、意識不明になるという所から始まり、過去や未来そしてパラレルワールドまで舞台が変化し様々な事象に巻き込まれるという話になります。
この小説は本当に情報量が多く1度では内容が完全に理解できないほど難解ですがとても世界観に引き込まれ気づいたら読み終わってしまいました。
作中の描写が上手く中々現実ではありえない情景でも容易に想像ができるそんな文体だと思います。
また後の作品につながるような描写もあり、読み返すとそういう所にも気づけて面白いです。
作者の他の作品だと有名な『日本沈没』や短編集の『ゴルディアスの結び目』等も面白いのでオススメです。
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読書感想文〜本紹介〜『同時代ゲーム』2024.09.30 月 12:17

今回紹介する小説は大江健三郎氏の長編小説『同時代ゲーム』です。

この小説は書簡体形式で進行する小説で語り手から妹に宛てた手紙で物語が描かれるという割と珍しい小説になります。
こういった形式なので感情移入もしにくく、文体も硬く非常に読みづらい小説で、自分も途中で最後まで読むのを諦めそうになったのですが後半に行くに連れてどんどん物語に引き込まれていって最終的には読み終えることができました。
 内容としては江戸時代に四国の山奥に脱藩者によって創建された「村=国家=小宇宙」という語り手の故郷の神話や発展、闘争の歴史を描いた物でとても不思議な世界観なのですが、面白い人物が多数出てくるので個人的には面白いなと思った作品です。
 生々しい描写や硬い文体などて読む人を選ぶ作品だと思いますがこの著者の作品に同じ世界観で読みやすくなっている『M/Tと森のフシギの物語』という作品があるのでそちらを読んでもいいかもしれません。
 著者はノーベル文学賞の受賞者で代表作の『万延元年のフットボール』という作品もオススメです。
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読書感想文〜本紹介〜『殺戮に至る病』2024.08.31 土 02:04

今回紹介する小説は我孫子武丸氏のミステリー小説『殺戮に至る病』を紹介したいと思います。

 作者の我孫子武丸氏は有名なサウンドノベルゲーム『かまいたちの夜』シナリオライターでもあり、自分もそちらで知って作品を読み始めました。
 この作品はミステリー小説の中でも叙述トリックを使った有名な作品で冒頭から猟奇殺人犯が逮捕されるところから始まり、時間を遡って顛末を知っていくという作品になるのですが、犯人と母親、元刑事の3人の視点で物語が進んでいくのですが事実を誤認するような描写があり、最後まで犯人は分かっているのに真相が分からないそんなミステリー小説になっています。
 ただ犯人が猟奇殺人犯なのでグロテスクな描写が多く、人を選ぶ小説にはなるのですが、叙述トリックものでは外せない作品であり、読めば忘れられない作品だと思うので是非一度は読んでいただきたいと思います。
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読書感想文〜本紹介〜『失楽園』2024.07.31 水 06:02

今回紹介する小説はジョン・ミルトン氏の『失楽園』です。

 自分が読んだのは平井正穂氏翻訳の物なのですが、訳注が多く古典の邦訳としてはとても読みやすいと思います。
 最初はタイトルに惹かれて読み始めたのですがすぐに読み込んでしまいました。
 本書は元は叙事詩なのですが物語調で口語訳で書かれているので詩としてはかなり読みやすいと思います。
 内容全体は旧約聖書に基づいたアダムとイヴの話になるという分かりやすく、普遍的なものになります。
 その中で悪魔や天使が出てくるのですがこれが人間味があり、とても身近に感じられます。
 別に自分はキリスト教徒でもないのですが子供の頃キリスト教の幼稚園に通ってたので少し知識がある分身近に感じました。
 洋書を読んでみたい、キリスト教文学を読んでみたい、そんな方にはオススメできる1冊になってます。
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読書感想文〜本紹介〜『道誉なり』2024.06.30 日 06:56

今回紹介する小説は北方謙三氏の『道誉なり』を紹介したいと思います。

 今回の小説の舞台は鎌倉幕府の終わりから室町時代に当たる南北朝時代の話でメインの人物はタイトルにもある【佐々木道誉】という人物でその他にも室町幕府を開いた【足利尊氏】の視点もあり、話の流れとしては鎌倉幕府の滅びから足利尊氏の死去までの話になります。
 個人的にはちょっとマイナーではあるのですが南北朝時代の泥沼な感じがすごい好きなんですよね。
 最近ってほどでもないんですけどジャンプでも『逃げ上手の若君』という作品で鎌倉幕府の生き残りである【北条時行】という人物を主人公に描いている作品があるので少し知名度は上がってきているのかなと思います。
 その中でも【佐々木道誉】という人物は【ばさら大名】と呼ばれ様々な逸話が残っているとても魅力的な人物で室町幕府の影の立役者ともいえる人物で好きな歴史人物の1人です。
 基本的には【太平記】という物語に沿って話は進んでくのですが北方謙三氏の作品の特色である男がどう生きるかという所に行き着くのですがそこに唄や笛等の芸能を交えて表現しているのでそこがまた独特で面白い部分だと思います。
 この作者が描いた南北朝時代の作品は沢山あるのでそちらもいつか紹介できればいいかなって思ってます。
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