読書感想文〜本紹介〜『樽』2024.11.30 土 01:42
今回紹介する小説はF・W・クロフツ氏の推理小説『樽』です。
こちらの小説は推理小説の中でもアリバイ崩しの傑作と呼ばれており、劇的な展開など派手さは無く、地道に地道に真犯人のアリバイを聞き込みなどで崩していく展開になってるので読み終わった時の爽快感はあまり無いと思うのですが、読み進めていくうちにだんだんのめり込んでいくそんな小説だと思います。
内容としては、ロンドンに到着した船荷の樽の中から大量の金貨と女性の死体が発見されるところから始まるのですが、その樽の経路から真相を探ろうとするのですが、舞台がロンドンやパリ、ブリュッセルへと移り変わり、樽が増えたり消えたりするのでわけがわからなくなるのですが、現場を調べ、こつこつ聞き込みをして地道に捜査を進めていくそんな展開に頭がこんがらがるのですが読む方も整理しながら読んでいくと、どんどん話にのめり込んでいき、捜査の一員になったような気分になれます。
自分がこの小説を読むキッカケになったのが鮎川哲也氏の小説『黒いトランク』を読んでこの小説に影響を受けた作品と知ったからなのでそちらを読んでみるのもオススメです。
読書感想文〜本紹介〜『果しなき流れの果に』2024.10.31 木 05:54
今回紹介する小説は小松左京氏のSF小説『果しなき流れの果に』です。
この小説は50年以上前に出版されたSF小説なのですが未だに色褪せない小説だと思います。
内容としては6000年前の地層から永遠に砂が落ち続ける砂時計が見つかりその後見つけた関係者が変死、行方不明、意識不明になるという所から始まり、過去や未来そしてパラレルワールドまで舞台が変化し様々な事象に巻き込まれるという話になります。
この小説は本当に情報量が多く1度では内容が完全に理解できないほど難解ですがとても世界観に引き込まれ気づいたら読み終わってしまいました。
作中の描写が上手く中々現実ではありえない情景でも容易に想像ができるそんな文体だと思います。
また後の作品につながるような描写もあり、読み返すとそういう所にも気づけて面白いです。
作者の他の作品だと有名な『日本沈没』や短編集の『ゴルディアスの結び目』等も面白いのでオススメです。
読書感想文〜本紹介〜『同時代ゲーム』2024.09.30 月 12:17
今回紹介する小説は大江健三郎氏の長編小説『同時代ゲーム』です。
この小説は書簡体形式で進行する小説で語り手から妹に宛てた手紙で物語が描かれるという割と珍しい小説になります。
こういった形式なので感情移入もしにくく、文体も硬く非常に読みづらい小説で、自分も途中で最後まで読むのを諦めそうになったのですが後半に行くに連れてどんどん物語に引き込まれていって最終的には読み終えることができました。
内容としては江戸時代に四国の山奥に脱藩者によって創建された「村=国家=小宇宙」という語り手の故郷の神話や発展、闘争の歴史を描いた物でとても不思議な世界観なのですが、面白い人物が多数出てくるので個人的には面白いなと思った作品です。
生々しい描写や硬い文体などて読む人を選ぶ作品だと思いますがこの著者の作品に同じ世界観で読みやすくなっている『M/Tと森のフシギの物語』という作品があるのでそちらを読んでもいいかもしれません。
著者はノーベル文学賞の受賞者で代表作の『万延元年のフットボール』という作品もオススメです。
読書感想文〜本紹介〜『殺戮に至る病』2024.08.31 土 02:04
今回紹介する小説は我孫子武丸氏のミステリー小説『殺戮に至る病』を紹介したいと思います。
作者の我孫子武丸氏は有名なサウンドノベルゲーム『かまいたちの夜』シナリオライターでもあり、自分もそちらで知って作品を読み始めました。
この作品はミステリー小説の中でも叙述トリックを使った有名な作品で冒頭から猟奇殺人犯が逮捕されるところから始まり、時間を遡って顛末を知っていくという作品になるのですが、犯人と母親、元刑事の3人の視点で物語が進んでいくのですが事実を誤認するような描写があり、最後まで犯人は分かっているのに真相が分からないそんなミステリー小説になっています。
ただ犯人が猟奇殺人犯なのでグロテスクな描写が多く、人を選ぶ小説にはなるのですが、叙述トリックものでは外せない作品であり、読めば忘れられない作品だと思うので是非一度は読んでいただきたいと思います。
読書感想文〜本紹介〜『失楽園』2024.07.31 水 06:02
今回紹介する小説はジョン・ミルトン氏の『失楽園』です。
自分が読んだのは平井正穂氏翻訳の物なのですが、訳注が多く古典の邦訳としてはとても読みやすいと思います。
最初はタイトルに惹かれて読み始めたのですがすぐに読み込んでしまいました。
本書は元は叙事詩なのですが物語調で口語訳で書かれているので詩としてはかなり読みやすいと思います。
内容全体は旧約聖書に基づいたアダムとイヴの話になるという分かりやすく、普遍的なものになります。
その中で悪魔や天使が出てくるのですがこれが人間味があり、とても身近に感じられます。
別に自分はキリスト教徒でもないのですが子供の頃キリスト教の幼稚園に通ってたので少し知識がある分身近に感じました。
洋書を読んでみたい、キリスト教文学を読んでみたい、そんな方にはオススメできる1冊になってます。
読書感想文〜本紹介〜『道誉なり』2024.06.30 日 06:56
今回紹介する小説は北方謙三氏の『道誉なり』を紹介したいと思います。
今回の小説の舞台は鎌倉幕府の終わりから室町時代に当たる南北朝時代の話でメインの人物はタイトルにもある【佐々木道誉】という人物でその他にも室町幕府を開いた【足利尊氏】の視点もあり、話の流れとしては鎌倉幕府の滅びから足利尊氏の死去までの話になります。
個人的にはちょっとマイナーではあるのですが南北朝時代の泥沼な感じがすごい好きなんですよね。
最近ってほどでもないんですけどジャンプでも『逃げ上手の若君』という作品で鎌倉幕府の生き残りである【北条時行】という人物を主人公に描いている作品があるので少し知名度は上がってきているのかなと思います。
その中でも【佐々木道誉】という人物は【ばさら大名】と呼ばれ様々な逸話が残っているとても魅力的な人物で室町幕府の影の立役者ともいえる人物で好きな歴史人物の1人です。
基本的には【太平記】という物語に沿って話は進んでくのですが北方謙三氏の作品の特色である男がどう生きるかという所に行き着くのですがそこに唄や笛等の芸能を交えて表現しているのでそこがまた独特で面白い部分だと思います。
この作者が描いた南北朝時代の作品は沢山あるのでそちらもいつか紹介できればいいかなって思ってます。
読書感想文〜本紹介〜『勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした』2024.05.31 金 08:13
今回紹介する小説はweb小説サイトの【小説家になろう】で連載しているいわゆる異世界モノの小説で1番好きな灯台氏の『勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界はでした』を紹介したいと思います。
この作品はかれこれ6〜7年ぐらい追ってる作品でほぼ毎日更新されるのでこれが毎日の数少ない楽しみでもあります。
この作品を簡単に言うと普通の主人公が異世界でいろいろな人に出会い仲良くなるほのぼのとしたラブコメって感じになります
話の中にシリアスな場面はあるのですが主人公が知らない所で起こるので基本主人公の周りは穏やかな雰囲気が広がっているので安心して読むことができます。
主人公以外の登場人物も一癖も二癖もありながらとても魅力的な人物が多く、主要な登場人物は心情が掘り下げられているのでそちらにも感情移入して読むことができるので読んでて良いなと思える作品です。
また書籍版は少しweb上のよりも構成が練られている感じがあり、加筆等によりweb版と書籍版で2度楽しめるのでどちらも読んでみるのをオススメします。
やっぱりweb発の小説はサクッと読めるのが1つの長所だと思います。今では色々なサイトで多種多様な作品が世に出ています。こういった中から自分にあった作品を探すのもとても面白いのでオススメしたいです。
読書感想文〜本紹介〜『檻』2024.02.29 木 05:31
今回紹介する小説は北方謙三氏のハードボイルド小説の『檻』です。
ハードボイルド小説は他の作者で言えば大沢在昌氏の『新宿鮫』シリーズも好きなのですが自分の中では北方謙三氏の作品が1番好きです。
同じ男でもセリフのかっこよさ、そして生き様に憧れるそんな人物の書き方が最高なので何回でも読んでしまいます。
特にこの作品は初期の頃の作品の中でも王道の名作だと思うのでぜひ読んでいただきたいです。
内容としては元ヤクザの主人公が足を洗い、平凡な生活を送っていたのだが、ある事件わきっかけにまたその世界へと戻ることになるという感じの話なのですが、この作品が書かれた時代が昭和の時代なので昭和のアウトローな感じがたまらないですね。
読書感想文〜本紹介〜『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』2024.01.31 水 11:39
今回紹介する小説は夢枕獏氏の『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』です。
この小説は作者が18年かけて書いた伝奇小説なのでとても読み応えがあります。
物語としては平安時代に真言宗の開祖で有名な弘法大師こと空海が、遣唐使として中国の唐に行くという話になるんですが、舞台の中国の唐の時代風景歴史と皇帝を頂点とする権力構成。過去の皇帝である玄宗と楊貴妃にまつわる秘事などを史実を軸にフィクションを織り交ぜて壮大なスケールで描かれています。他にも仏教の話や妖術の話があり、全4巻と少し長めなのですが1巻1巻に山場があり、とても読み応えがあります。
この作品の空海はどこか同作者の作品の『陰陽師』の安倍晴明に似ており、そちらが好きな方はこちらを読んでも楽しめると思います。
読書感想文〜本紹介〜「乱れからくり」2023.10.31 火 12:00
今回紹介する小説は一風変わって推理小説になります。
推理小説を読むきっかけになった本を紹介します。 (さらに…)